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こうして食べたい料理や食材を具体的に教えてくれるようになったのも最近の事で、友人達からはお前の日頃の食育の賜物だと揶揄われていたが、本来ならば誰もが自然に備えている欲求だとリアムは良く知っている為、それを素直に教えてくれるようになっただけでも嬉しくて、チャイニーズかと呟きながら脳裏に慶一朗が好きだと言った店をリストアップしていく。
「早く帰らないとデュークも待っているだろうしな」
「そうだな……ああ、そうだ、デュークの事で相談があるんだ、ケイさん」
先程まで青から紫へとグラデーションを見せていた空が濃紺に染まり始め、ブルーアワーの終焉が近付いていることに気付いた慶一朗が立ち上がり、そんな己の伴侶を見上げたリアムが家で大人しく留守番をしてくれている愛犬について相談があると告げつつ同じように立ち上がる。
ここでこうしてただ静かに寄り添いながら眼下の世界を眺めるのも悪くはないが、やはり自分達は自宅のソファに横臥し、リアムをクッションに、愛犬のデュークを抱き枕にしながら好きなドラマを見るのが相応しいと慶一朗が笑いつつ手を伸ばし、その手をしっかりと握ったリアムが今できる精一杯だと教えるように肩を触れ合わせながら同じ早さで歩き出す。
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