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愛犬の鳴き声に出迎えられ、ドアを開けて大人しく待ち構えつつ尻尾だけを激しく左右に振っているデュークの頭を交互に撫でた二人は、いつもより遅くなったディナーを終え、慶一朗が丹精込めて淹れてくれたコーヒーを満たしたカップを手にソファへと移動し、帰宅前に慶一朗が望んでいたようにリアムをクッション代わりに寄り掛かり、頭を擦り寄せてくるデュークを抱き枕よろしく抱きしめる。
腕の中の少しごわついた被毛に心地良さを感じつつ満足げに息を吐くと、さっき公園で見たブルーアワーが本当に綺麗だったとリアムが感動したことも思い出したような声で呟き、背後に頭を向けながら慶一朗がそうだなと頷く。
「また見たいな」
「うん」
今日の光景は一生忘れられない物になったが、どうせならば一度では無く何度も見たいと素直に告げる慶一朗にリアムが頷き返し、またあなたの仕事が早く終わりそうなときに見に行こうと目の前の柔らかな髪に口付ける。
「良いな、それ」
「うん」
慶一朗の声に眠気が混ざった事に気付き、少しの仮眠なら構わないとそっと囁くと、ダーというドイツ語の感謝の言葉を極限まで短くした言葉と思しきものが口から流れ出す。
「くぅん?」
何かを確かめるようなデュークの声に気付いたリアムがそっと名を呼んで己へと頭を向ける愛犬に静かにしろと口の前に指を立てて合図を送ると、二人が賢いと褒める理由を教えてくれるようにその場に丸くなり静かに目を閉じる。
テレビのボリュームを最小に落とし、慶一朗の一時的な眠りを妨げるものを排除したリアムは、慶一朗を片手で抱きながら片手でスマホを操作し、今日の夕方、脳裏だけではなく心にも焼き付けたブルーアワーの発生メカニズムについて調べ、これからもいつもの場所と呼んでいるあの公園で見る事が出来れば良いと、寝息を立てる慶一朗の為に願うのだった。
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