序章 瓶子明彦の出発

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序章 瓶子明彦の出発

 明彦(あきひこ)は朝食をすませた。これから働き先の八百屋に向かう。明彦の家は武家であり、武士だった父はその後、対妖魔課と呼ばれる妖怪退治、妖怪の揉め事を解決する部署にいた。母と明彦はそんな父を誇りに思っていた。  明彦は物心がついたときから自分も対妖魔課に入ると思っていた。しかし父の友人の八百屋の酒井さんが人手不足でそちらに駆り出されたのである。父は対妖魔課を辞してこちらに帰ってきており、酒井が困っているからと明彦は八百屋で働かされたのである。  こんな扱いなのは兄の明和(あきかず)がいるからだろう。兄は軍隊に入った。しかし明彦は対妖魔課に入りたいと思っていた。それは明彦には妖怪とすぐに仲良くなれるという特殊な力があるから。ここ福山でもおちゅんと呼んでいるメスのキジと仲が良い。そんなことを考えていると 「明彦さん、そっちの野菜を並べておいてくれ」  酒井さんに言われる。明彦はすぐに並べる。 そうして一日が過ぎていく。仕事が終わり家につくと、珍しく父が門のまえで立っていた。 「明彦すこしいいか」 「はい」  父に呼ばれ驚く明彦。明彦は居間に向かう。 「大事な話がある。そろそろ自立したらどうだ明彦。二十三歳にもなってまだ家にいるのか」 「父さん、俺からも大事な話があります。俺は対妖魔課に入りたい」 「対妖魔課に?まさかお前からそんな事を言うとは…。酒井の家に世話になるのかと思った。分かった、こちらで手配しよう」  そして明彦は対妖魔課の門を叩く事になる。  次の日、酒井さんに報告をする。 「今までありがとう明彦さん。うちの子も大きくなったから大丈夫よ」と奥さん 「安心していきなさい」酒井さん 「そうですか勇一朗が…。ありがとうございました」  帰り道おちゅんとあったのでおちゅんにも報告した。 「明彦様は舞島に向かわれると…。気をつけてくだされ。舞島には色んな妖怪がいますから。」  そして明彦は、父から授かった一文字の刀を手に福山を出発した。
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