里の蔵の記憶

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里の蔵の記憶

 祖父というのが、けっこうな人物で、 代々当主になると名前を襲名している様な、 家の嫡男だった。  祖父も幼い時から 次代を担うタメノ当主教育を受けていたとか。  其の辺の話は、長女叔母に聞いたのが殆ど。  弟が生まれるまでは、長女だからと、 家の事を叩き込まれたみたいだ。  わたしが子供の時、 継承事の勉強みたいな色々を教えられた時、 一族の話を聞かされた記憶を掘り起こす。  うちの母は三女だからか、 その辺りの話は余り知らないみたいだった。  なんでも、わたしは長女だからと、 昔、一族が住んでいた集落に連れていかれたのも 懐かしいが、鮮明な思い出でもある。  戦争で本家の屋敷は燃えて無くったそうで、 蔵だけが残り、それがやたらと大きかった!!  その時に『けーちゃん』と『お兄ちゃん』も居たような気がするけれど、子供の記憶で定かでない。  祖父の一族は商いの名家で、分家も沢山あった。 だけれど、やっぱり戦争で離散している。  それまでは一族を守る為、 近親結婚を繰り返していたらしいが、 まあ、昔は割とそんなモノだろうけど、、  一族の里に連れて行かれた時に、 一族が氏子頭をしていたという社も行った。  なんだか注連縄が独特で、 子供ながらサスペンスドラマの場所みたいだと 思っていたのを覚えている。  そこで着物を着る『けーちゃん』とか、、 もう何のオカルト?集落。  大人になってからも足を運んだが、 やっぱり犬神家臭がして背筋が寒くなった。  氏子頭をしていた社の聖地が山の上にあり、 昔は、お墓もそこだと聞いていた。 『お山』と呼ばれた場所には、子供は上がれない。  亡くなると山の上まで樽の御棺に入れて、 籠みたいに担いで持っていくというのだけれど、 それも大人だけだった。  そりゃ大変だったみたいで。  あまり大きい樽だと上がれないから、入れるのに『折る』のが通常というのが、なんだかなだ。  ま、大変が過ぎる!ので、 一族は近年、山から墓を下ろしたのだけれど、 うちの家(本家)は京都に墓を移した。  祖父曰く、 その方が墓参りに行く楽しみがあるやろと。  観光や行事が多い京都の真ん中に墓があれば、 自ずと墓に足を運ぶだろうとの考え。  さすが商人だ。 が、もしかしたら『里』との縁を 続けたくなかったのではないかと今は思う。  『けーちゃん』の家は 麓の寺に墓を置いたけれど、 『けーちゃん』は祖父の墓と同じ京都の墓苑に、 母親と『お兄ちゃん』のお骨を入れたと聞いている。  その辺りで、何故に?の疑問が浮かぶが、   あまり気にしないでいた。  そもそも祖父の親族なのか、分家なのかの 距離感が、ちょっと違うのだ。 一蓮托生みたいな気質が感じれる。  そんな中で『けーちゃん』は確か、 祖父がケーキ屋をしていた時だって、 祖父の店で働いていた。 そういえば『お兄ちゃん』は 何処で働いていたのだろうか?  とにかく謎の多い親族の答えは 何時かやってくるのだろうか?とさえ思う。  そんな時に、 母から『けーちゃん』が部屋を借りる為の 保証人になった話を聞いた。  そうして漸く『けーちゃん』は叔母ではないと 知った。 じゃあ、『けーちゃん』は誰なのか? その問いに母が返答したのは意外な答えで、 『お妾さんの子供』だった。
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