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妾と書いて、何と読む
けーちゃんの『お兄ちゃん』がいつも祖父との会話で自分の事を、『僕』と言っていたのが妙に耳に残っている。
そして祖母が、けーちゃんに対して何処か一線を引いている様な感覚を持っていると、子どもながらに感じていた肌感も、妙に思い出す。
祖父には確かに『お妾さん』がいたけれど其れは、けーちゃんのお母さんでは無いはずだ。
けれども祖母にとって、けーちゃん『お妾さん』を何処か思わせる存在だった気がする。
妾と書いて、めかけ、もしくは、わらわ。
僕の語源は下僕。
よく時代劇のお姫様が、自分の事を妾と呼ぶけれど、『妾』も『僕』も、元々自分を謙遜して呼ぶ言葉だったらしい。
それを『けーちゃん』と『お兄ちゃん』を見ていると、子供ながらに感じていた。
今となっては、『僕』なんて、元々の語源を思うような使い方は全く残っていない。
そもそもそんな場面が、昭和に残っていないからか。
戦後、新日本国憲法が人の平等を至る処に謳い、『家長』制度のあり方が変わったが故なのだろう。
けれど、因習深い地域には、古いしきたりと共に水面下に沈んで残されていた。
祖父の一族がいた場所は、其んな地域で、それこそ最近オークションで『呪術』に使われたと話題になった、『鬼こけし』が出てきた付近だ。
子供の時に感じた、けーちゃんの微妙な立場を、まさか令和になって、考える時がくるとは思わない。
けーちゃんには謎が多い。
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