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両親
私の両親は外面だけはとても良い父と母だった。
両親は、近所の人とも上手くやっている。
そして両親は自分の本性が近所の人にばれないように細心の注意をはらっていた。
その為私には、他の友人と同じくらい小遣いを与え洋服を買い高校にも大学にも進学させた。
食事も普通に栄養バランスの取れた食事を母は私に作ってくれた。
家も古いが普通の小さな田舎の一軒家だ。
周りから見れば普通の家族、きっとそう見えたに違いない。
でも、実際は違っていた。父は浮気を繰り返し
数日帰って来ない事があった。
そしてどうやら愛人に子供が出来てそれをずっと隠していたらしい。
それでも母と父は離婚しようとは思わなかった。
近所の体裁の為なのだろう。
ずっと仲のいい夫婦を演じていた。
近所の人にばれないように。でも父が何処かの愛人と子供に家のお金を探して持って行くので家にはお金が無くなっていった。
高校 大学まで進学できたのは私が万引きを両親からさせられていたからだ。
私は何度も「お願い、大学も諦めるから犯罪は止めようと」と言って両親を説得した。
勿論両親も万引きをしている。万引きをした品物を売って生活していたのだ。
でも、両親は私がそう言うと私を殴った。
私は両親の言う事を聞くしかなかった。
そして、あの日が来た。私は大学時代バイトで
貯めていたお金だけは取られないように家ではないある場所に隠していた。それは、バイト先のロッカーだ。
両親には家にバイト料全て入れるように言われた。小遣いだけはいつも通り渡すからと。
でも、私はもう犯罪に手を染める事に嫌気がさしていた。私がバイト料を全て渡したとしても、両親はきっと私にまた犯罪を強要するに違いない。
一刻も早くここから逃げなければならない。
あの日私は、東京に行く準備をして大雪の中
家を出て雪が収まるまで駅前のホテルに一泊する予定で「北海ホテル」に予約を入れていた。
両親が寝ている朝早く家を出てホテルに荷物を預かってもらいホテルの中にある二十四時間温泉やレジャー施設、レストランで時間を潰しチェックインの時間になったらチェックインをする予定だった。
これで計画通り東京に行って就職して働ける職場は東京に行ってから探すつもりでいた。
地元で探すと両親にばれると思ったからだ。
私は、社員寮がある仕事を探すつもりだった。
それなのに当日、いつもなら寝ている筈の母親が起きてきた。
当然私の荷物を見た母は、私が何処か遠くに行く事を察知した。
そしてバイト料の事を問い詰めた。
私は、お金まで巻き上げられたらと思い必死で持っていた荷物を振りまわしながら外に出ようとした。
それでも母は私の荷物を奪おうとする。
「お前が居ないと生活が出来ない」そう言って
私は玄関に置いてあった桑を母の頭に振り下ろした。母は「ぎゃー止めて」そう叫んだが日頃の恨みから私は止める事が出来なかった。
その母の悲鳴を聞いて起きた父にも同じように玄関に置いてあった桑を振り下ろした。
そう、私は自分の両親を東京に出て来る時に自分で殺してしまったのだ。
両親の死体は北海道ならどの家庭にもある庭の雪の下の貯蔵庫の中に隠したのだ。
もともと家の貯蔵庫は家族三人が余裕で入れるくらいの大きさに造ってあった。
そう、犯罪がばれて警察に目をつけられた時に隠れる場所として大きめに作ってあったのだ。
「ここなら絶対にばれない。両親が居なくなっても近所の人の通報で行方不明という事になるだろう」私は桑と両親を貯蔵庫に今も隠している。
実際、警察から職場に電話があった両親が行方不明になっている事、両親の行き先に心当たりはないか?と言う事。私が有給をもらって北海道の家まで行って警察に両親の事について話した事もあった。
二年経った今も警察は両親の遺体を見つける事ができていない。
あの貯蔵庫は見かけも場所も他の家とは違っていた。
外見にこだわる母は貯蔵庫に見えないように
お洒落なウッドデッキ風に見せかける貯蔵庫にしたのだ。
一階のベランダの近くお洒落な広い貯蔵庫誰にも見つからない。あそこなら大丈夫。
それに、あの日は特に北海道は大雪だった。
警察もそろそろ捜査を打ち切ってくれるだろう。遺体が見つからなければ行方不明で片付くんだから。
私はそう思っていた。絶対ばれないと。。。
それでも私は毎年雪を見るとあの日を思い出して未だに震える。
今も震えが止まらない。やっと見つけた寮付きの職場一生懸命働かなければならないのに。
ずっと震えが止まらない。
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