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茂木さくら
私はそろそろ警察が行方不明として片付けてくれるだろうと思っていた。
そんな時だった。いつものように職場のブティックを開ける前の掃除を同僚の茂木さくらとしていた。私は自分の携帯の着信に気がついた。それは警察からの電話だった。
「はい、もしもし〜そうですか〜わかりました。今までありがとうございました。あの家ですか?あの家は両親がいつ戻って来てもいいように私がたまに行って管理しようと思ってます。
ですから私は両親の思い出の家は売りません。誰にも〜はいわかりました。はい」
私は電話口で涙を浮かべて警察にそう話した。
内心私は、ほっとしていた。警察が両親を行方不明として片付けてくれたのだ。
あの家は売る訳がない。死体が見つかれば間違いなく私が逮捕される。ドラマで見た死体さえ
見つからなければ犯人はわからないと。
その時だった。同僚のさくらが私に話しかけて来た。
「ご両親行方不明って言ってたわよね?今の警察の電話?なんだって警察の話し?ご両親見つかった?」
さくらは私をいつも心配してくれた。
「それが〜行方不明で片付けられてしまって」
「そうなんだ〜そう言えば雪子の家って北海道だったわよね。もう直ぐお正月休みだし北海道の雪子の実家見てみたい。私は東京育ちで東京から出た事ないんだよねー。北海道行ってみたい。さっき聞こえたんだけどご実家売らないんでしょ?掃除するって言ってたし私、掃除手伝うよ。北海道の大雪ってものを見てみたいの」
私は焦ってさくらに言った「両親が行方不明になってから二年経ってるんだよ。汚いから家に泊めめられないし、食べるものもないから」
それなのにさくらはテレビで見たのか?
私にこう言った。
「北海道の人ってみんな貯蔵庫に白菜とかじゃがいもとかを入れているんでしょう?」
私はここは嘘をついたほうがいいと思った。もし、白骨化したであろう遺体が見つかったら?
落ち着け〜でもあまり拒否すると怪しまれる。
「家の貯蔵庫はもう潰したの。父と母がね。突然言い出したの「もう貯蔵庫は要らない」って
たぶんその時から家を出ようと考えていたんだと思う。私が東京に行くタイミングで」私はそう言って涙を流した。
私は相当な嘘つきだ。
それでもさくらは言った。「そうなんだねー。雪子、ごめんね変なこと言って実家に行きたい
なんて言ってどうかしてたわ。でも、ご両親の手がかりとか見つけなくていいのかな?って思ってそれで実家の掃除のお手伝いしようかな?って」
私は考えた。仲がいいさくらの気持ちをこれ以上蔑ろにできない。
「さくらの気持ちとても嬉しいわ。やっぱり私の家の掃除お願いしようかな、元旦一緒に行って掃除手伝って、でも家の庭雪が積もってるけど畑なの。父も母も庭の畑だけは触らせてもらえなかった。だからさくらも実家の庭の畑の中だけには入らないでね。約束守れる?」
さくらは満面の笑顔を見せて「わかった約束守るよ。北海道行ってみたかったんだよねー。雪子〜雪子〜実家の掃除が終わったら時計台とか案内してあと動物園とかあるよね〜行ってみたかったんだよね〜」
さくらは北海道に行くのがとても、楽しみ
みたいだった。
さくらと私はお正月に北海道の実家に行って掃除をした後、近くのビジネスホテルに二人で泊まる計画をした。そして休憩時間に携帯からホテルの予約をした。飛行機の切符などは仕事の帰りに近くの旅行会社に相談に行くつもりだ。
大丈夫。きっと大丈夫。
あの実家にさえ泊まらなければもう白骨化しているだろう骨は見つかる筈がない。あの庭にさえさくらが入らなければ見つかる筈がない。
私はそう信じていた。
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