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隼人も、絵麻には紹介してもらって何度か会っていた。
──ああ、もしかして。
隼人はふと思い当たる。
「絵麻ちゃんに何か言われた? 彼氏に見せろとか?」
「見せろとは言われてません。でも絵麻は彼に見せるんだって話してたから、隼人さんも喜ぶのかなと思って」
絵麻が交際しているのは、三歳ほど年下の大学生らしい。
二十二歳かそこらの「若い男」となら確かに、さぞや盛り上がることだろう。
いや、隼人も三十になったばかりで、まだまだ若いつもり、ではいる。
──なるほどね。だいたいわかった。だけど……。
「あのさ、絵麻ちゃんが見せるのって、その。──そういうとき、じゃないのかな」
「……確かにそう、かも」
まるで初めて気が付いたように、唯が瞠目した。
「でも、お風呂入ったら着替えちゃうじゃないですか! せっかく可愛いの買ったから、隼人さんにこれ見せたかったんです!」
服を直すこともせず、必死で訴える恋人。
綺麗で可愛い唯の今の姿に何も感じない筈はない。
とはいえ突っ込みどころが多すぎて、隼人はつい冷静になってしまった。
「うん、だからさ。風呂入る前でよかったんじゃないの?」
「……あ」
何故、そんなことに考えが至らないのだろう。
職場での冷徹にさえ映る、有能な社員としての彼女からはあまりにも遠い。
掛け離れ過ぎている。
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