Curious

4/4
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
 いくら暖房を効かせた室内とはいえ真冬なのだ。  実際、隼人は帰宅後すぐに着替えた部屋着のスウェット上下に、起毛の上着まで羽織っているというのに。  所謂「保温効果の高い長袖肌着」さえ着ていない唯が、両肩まで剥き出しの格好にぶるりと軽く身震いしたのがわかった。  普段はともかく隼人の自宅マンション、……「恋人の部屋」を訪ねる際は、「色気のない」そういったものはやめるよう絵麻にアドバイスされたらしい。  正直、隼人はそんなことはまったく気にしないのに。  脱いでしまえば、身に着けるものの「色気のあるなし」など関係ないだろう。それとも気にする男のほうが多いのか?  ──まったく、この子は。 「寒いだろ、風邪引くよ」  そっと両手を差し伸べて、肩から落ちたブラウスを引き上げる。 「……どうせならさ。このまま、──する?」  しかし声を潜めて誘った隼人の心を叩き折るように、唯が否定の声を上げた。 「え、やだ! ケーキ食べましょうよ、せっかく買ったのに。あのお店の、綺麗なだけじゃなくてすごく美味しいんですよ。私、楽しみにしてたんです!」 「あ~。そ、だね」  他に何とも言いようがなく棒読みで返した隼人に、容貌はこの上なく美しい恋人が無邪気な笑みを向けて来る。 「じゃ、お茶入れますね。あとお皿~」  隼人が直したブラウスのボタンを留めると、そう言って立ち上がり、うきうきとキッチンへ向う唯。  その後ろ姿を見送りながら、隼人は思わず溜息を吐いた。  ──本当に君は、飽きないな。俺はもう熱くて、頭が煮えて手が震えそうだよ。                             ~END~
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!