初恋が動き出す

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僕が御手洗から唇を離すと、彼は薄っすらと笑みを浮かべて言った。 「いつもこうやって男を連れ込んでるのか?」 「違う。僕は本当にあなたのことが……」 「お前みたいな顔のいい男に迫られたら、悪い気はしないけどな。」 「そういうことじゃなくて……」 御手洗の誤解を解きたい。 だけど、僕の口から言葉が出てこない。 御手洗の気持ちを無視して、無理やりキスをしたのは事実なのだから。 「だったらなんだ?」 御手洗の鋭い視線が僕に突き刺さる。 僕はごくりと唾を飲み込んだ。 「俺と寝たいのか?」 御手洗は試すような視線で僕に問いかけた。 僕は一瞬目を閉じた。 そして、もう一度、御手洗を見つめた。 「寝ません。今は。」 「今は?」 「はい、あなたが僕を好きになってくれたら、その時は迷わずあなたを抱きます。」 「へぇー、俺が南雲を好きになるって?」 「僕、本気で御手洗先輩を口説きますから。」 「で、今夜は?何してくれるんだ?」 御手洗は起き上がり、唇が触れるギリギリまで僕に顔を近づけた。 「先輩、そんなに近づいたらまたキスしますよ。」 「できるもんなら。」 「僕のこと信じてないでしょ?」 「さぁな。」 それでも僕はあなたが好きです。 その言葉を胸にしまい込み、僕は言った。 「御手洗先輩、目閉じてください。」 「嫌だ。」 「わがままですね。」 「うるさい。」 僕は御手洗の唇を指でなぞった。 「これから毎日キスしますね。」 「んはっ、それは楽しみだ。」 そして、僕は彼の唇に2度目のキスをした。
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