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嫉妬、のち、キス
僕の予想は的中した。
御手洗が出勤すると、女子社員の視線は彼に釘付けになった。
御手洗は昨日、僕の家に泊まって、同じベッドで眠ったのだと声を大にして叫びたい。
それが言えないことがもどかしい。
御手洗を見つめる視線全てに腹が立つ。
「南雲、なーぐーもー。」
「あ、はい!」
「ぼけっとしてんな。」
「すみません。」
嫉妬に駆られ、仕事が手につかないなんて御手洗に知られる訳にはいかない。
僕は深呼吸をして、御手洗の元へ急いだ。
「何でしょうか?」
「午後から会議がある。この資料を人数分用意しておいて。」
「分かりました。」
僕は御手洗から資料を受け取ると、早速、準備を始めた。
その頃、御手洗は周りの視線を一切気にする事なく、手際よく仕事をこなしていた。
御手洗はそこに居るだけで、ひとを惹き付ける。
その上、仕事もできるときたらモテないわけが無い。
今の僕ではあの頃と同じ。
御手洗には何も敵わない。
このままではだめだ。
早く仕事で結果を出して、彼に認めてもらいたい。
嫉妬してる暇なんてないのだ。
僕は自分の頬を叩き、顔を上げた。
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