嫉妬、のち、キス

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「終わった……」 「お疲れ様。」 「御手洗先輩もお疲れ様です。」 「俺が教育係をやって、根を上げなかった奴はお前が初めてだよ。」 「そうなんですか!?」 「ああ。南雲、なかなかやるじゃん。」 御手洗は僕の頭を撫でた。 その度に、僕は彼に出会った日を思い出す。 「それならご褒美ください。」 「ここは会社だ。」 「どこならいいですか?」 「お前ん家。」 御手洗の言葉に僕は戸惑いを隠せなかった。 「だから、スーツ返したいし。」 「あ、そういうことですか。」 期待した自分に呆れる。 御手洗が僕と居たいわけないのに。 すると、僕の予想外の言葉を御手洗は口にした。 「明日は休みだから、一緒に過ごすか?」 「いいんですか!?」 「声が大きい。」 「すみません、嬉しくてつい。」 「ほら、行くぞ。」 「先輩、歩くの速いです。」 「あー、世話の焼ける奴だ。」 そう言いながら、御手洗は僕の歩幅に合わせてくれた。 やっぱりあなたは優しい。 好きがどんどん溢れていく。 僕は御手洗の横顔を見つめながら、微笑んだ。
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