嫉妬、のち、キス

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「省吾さん、今夜も泊まってくれますか?」 「いや、今日はスーツ返したら帰るよ。まだ電車もあるし。」 「明日、予定あるんですか?」 僕は御手洗に問いかけた。 「特には。」 「今夜、僕の家に泊まれば、手作りの美味しい夕飯が食べられます。」 「それから?」 「それから……風呂上がりには1週間の疲れを癒すマッサージをします。得意なんです。」 「なるほどな、確かに肩は凝ってる。」 御手洗はなかなか首を立てに振らない。 また僕を試しているのだ。 ならば、あとひと押しするまで。 「あとは、寝る前と起きた時、僕の顔が見られます。」 「それって、いいことか?笑」 「いいことでしょ?」 「お前、面白いな。」 真面目に言ったつもりが、御手洗は笑っている。 「それなら、夕飯に唐揚げ作ってくれるなら泊まってもいい。」 「ほんとですか!?」 「ああ。」 「作ります。今すぐ!」 「その前に着替えていいか?スーツは肩が凝る。」 「はい、僕の部屋着きてください。」 「それと、スーツはクリーニングに出して返すから。」 御手洗は脱いだスーツを持って帰ろうとした。 ん?それならば、御手洗はなぜ僕の家に来たのだろう? 本人はスーツを返す為と言っているが、辻褄が合わない。 僕はほんの少しだけ、自惚れてもいいのだろうか? 御手洗も僕と居たいと思ってくれていると。 まさか、そんな夢みたいなことある訳ないか。 御手洗の本当の気持ちが知りたい。 僕は彼の背中を見つめた。
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