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その数年後、南雲は再び俺の前に現れた。
今度は優秀な部下として。
自己紹介は聞くまでもなかった。
なぜなら、一目見ただけで南雲光輝だと分かったから。
しかし、南雲は俺の事など微塵も覚えていなかった。
それなのに、俺を「好き」と言った。
嬉しい半面、悔しかった。
俺ばっかり、南雲のことを覚えていることが。
だから、俺は南雲を弄んでやろうと決めた。
焦らして、焦らして、ネタバラシをするつもりだった。
初めは順調だった。
だが、主導権を握っていたはずなのに、あの日、まんまと南雲にやられてしまった。
好きな人に触られて、興奮しないわけがない。
俺の判断能力は鈍った。
俺の心が、身体が、南雲を求めた。
そして、俺の口から「好き」の二文字が溢れた。
悔しい。
だから早く思い出せ。
10年前のあの日、俺とお前が出会った日を。
そしたらもう一度、お前に好きと言ってやる。
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