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「どうして会社で俺と再会した日、知らないふりをしたんだ?」
「省吾さんが、当時の冴えない僕を覚えているはずがないと思ったんです。」
「はぁ、馬鹿なやつ。」
「え?」
御手洗の言葉に思わず僕は聞き返した。
「覚えてたよ。忘れるわけねぇだろ。」
「省吾さんが僕のことを?」
「ああ、すぐに分かった。自己紹介も聞くまでもなかった。だけど、お前は覚えてないようだったし、なんかムカついて。」
「覚えててくれたんだ。」
僕は嬉しさのあまり涙を流した。
「おい、泣いてないで人の話を聞けって。」
「はい。聞いてます。」
「だから、俺もあの日から、つまり、光輝と初めて会った日からお前のことが気になってた。分かったなら泣きやめ。」
御手洗は、僕の頬に流れる涙を指で優しく拭った。
「1回しか言わないからよく聞けよ。」
「はい。」
「俺は光輝が好きだ。」
そして、御手洗は僕を優しく抱き締めた。
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