現実は妄想より甘い

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「何からみますか?」 「そうだな、服みよっかな。」 「省吾さんの着てるものは、いつもオシャレですよね。」 「そう?あった。この店でよく買ってる。」 御手洗は、ひとりで店内に入っていった。 僕はオシャレな店構えに圧倒され、入口で立ち尽くした。 「おい、光輝も行くぞ。」 「は、はい。」 「いらっしゃいませ。」 店の中に足を踏み入れると、イケメンな男性店員が僕に微笑みかけた。 「御手洗さんのお連れ様ですか?」 「あ、あの...」 「そうだよ。ちょっかい出すなよ。」 「省吾の子なら、怖くて手出せないわ。」 僕は2人の顔を交互に見た。 知り合いなのか? 「ここの店長の木村。高校の同級生。」 「おい、紹介が雑だぞ。」 「紹介しないよりマシだろ。」 「君、ほんとにこいつでいいの?口悪いし、愛想もないだろ?」 「うんと...」 「おい、余計なこと言ってる暇があったら仕事しろ。」 「はいはい。これも接客ですから。ところで、お客様のお名前を伺ってもよろしいですか?」 木村はすっかり店員モードで僕に問いかけた。 「南雲光輝です。御手洗さんの職場の後輩です。よろしくお願いします。」 「南雲くん...って、まさか。」 「木村、余計なこと言うなよ。」 「そうか、そうか。俺に紹介したくない訳だ。」 「木村、それ以上言ったら...」 僕は会話の意味が分からず、再び、2人の顔を交互に見た。 「省吾さん、どうかしましたか?」 「なんでもない。試着してくる。」 「はい。待ってます。」 「光輝も来るんだよ。」 そういうと、御手洗は俺の腕を掴み、奥にある試着室へ連れていった。
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