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しばらくすると、番号札を持った御手洗が席に戻ってきた。
「おかえりなさい。」
「ただいま。」
「お冷取ってきますね。」
「ありがと。」
僕はお冷を取りに席を立った。
そして、コップに水を注ぎながら、御手洗の横顔を見た。
昔も今も、御手洗はそこに居るだけで注目を浴びる。
今、この瞬間さえそうだ。
通りすがりの女子2人組が、御手洗のことを何度もチラチラ見ている。
しかし、御手洗は気づいているのか、いないのか、手元のスマートフォンを弄ったままだ。
僕の方が、イライラしているではないか。
彼は僕の恋人だから、視界に入れるな。
言える勇気が僕にあったなら良かったのに。
僕は湧き上がる嫉妬心を抑えながら、御手洗の待つ席へと戻った。
「お待たせしました。」
「ん、ありがとう。」
「仕事ですか?」
僕は、御手洗のスマートフォンを見ながら尋ねた。
「ゲーム。最近、ハマってる。お前もやる?」
自分の好きなものを語る御手洗は、少年のように可愛い。
「どんなゲームですか?」
「パズルゲーム。」
「それなら得意です。やります!」
「おお!どっちが先にクリアできるか勝負だな。」
御手洗は僕に笑顔を向けた。
彼のこの表情が見られるのは僕だけ。
なぜなら、御手洗は僕の特別で、僕が御手洗の特別なのだから。
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