先生は高校生

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■本文 「先生は高校生」 裕尾十造 「紗菜ちゃんあのね。私、青井先生が好きなの」 女の子の悲鳴を浴びているサッカー部で人望の厚い、あちら側が眩しい存在なので、一応少し知っている程度の同級生の姿を、今日も窓から何気なく見ながら、約束してもらった通り、誰も他にいなくなるのを待って放課後の教室で私は親友の紗菜ちゃんに告白をする。 メガネ姿の紗菜ちゃんとは幼稚園生の頃からずっと仲良しで、別々のクラスになって少し仲が悪くなった時も会ったりケンカもしたこともあったけれど、いつも元通りに、いつの間にかケンカをする前の仲に戻っている不思議な仲良しの関係なの。 私が悪いケンカをしても紗菜ちゃんは許してくれるし、紗菜ちゃんが悪いケンカをしても、私の方がから近寄って仲直りをしちゃう。切っても切れない縁」とはこういう仲のことを言うのだろう。「親友」という言葉では片付かない縁。 高校生になって初めて夏休み前に、放課後の誰も居ない教室で、私は思い切って親友の紗菜ちゃんに好きな人を打ち明けた。 紗菜ちゃんは驚いたのかメガネを少しずらしてしまい、それを指で元の位置に直しながら何度か瞬きを繰り返して私の目を見つめてくる。真意を確かめたいのだろう。 「冗談や遊びじゃなくてね、本気で好きなの」 言っていて恥ずかしくなってくる頬を自分の掌で抑えれば熱く火照ってた。窓から差し込んでくる夕日だけが原因じゃないだろう。 紗菜ちゃんは私から視線を外して俯いて私の上履きを見た。 「――それ、本当の気持ち?」 「うん。青井先生は独身だし、若いし、私もっともっと大人っぽくなって似合うお嫁さんになりたいの」 「……そっか」 紗菜ちゃんは私の気持ちを笑い飛ばしたりはしなかったけれど、 「でも葵ちゃんが結婚をした『青井葵』アオイアオイって2回繋がる名前になっちゃうわね」 紗菜ちゃんが足元を見ていたのは私の上履きの名前を見ていたのだろう。 私の名前は葵。 紗菜ちゃんの言うとおりだ。 「……いつからなの?」 紗菜ちゃんは私の机に腰をかけて私の目をじっと見つめてきて、そう尋ねてくるものだから、私もドキドキとしてしまう。 「前から……初めて教室で自己紹介をしてきた入学式の後の教室の時から『なんかカッコよくていいなぁ』って思っていたんだけれどね」 「うん」 「こ、この前、私が転んで足を捻挫した時があったでしょう?」
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