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マフラーに顔を埋めるようにした光輝に、あえて、クリスマスの話題を振ってみる。
ほらほら、誘ってくれて、いいんだよ?
サークル帰りの夜、大学から駅までのほんの10分。
でも、二人きりになれる貴重な時間。
駅が徒歩30分だったらいいのに、と思うあたしに顔を向け、
「渡辺、手袋もなし? 寒くね?」
あっ! 気づいてくれた!
あたしはちょっと肩を竦め、
「あ、うん……今日忘れちゃったんだよね」
などと言ってみる。――わざと持ってきていないことなんか、おくびにも出さずに。
実を言うと……ワンチャン狙っているのだ。
ほら……少女漫画なんかでよく見る、「彼氏のコートのポケットの中で、手をつなぐ」ってやつ……!!
まだ彼氏じゃないけど! 女友達だって、冗談のノリで、それくらい……許されるよね?
「この寒いのに手袋なしじゃ辛いだろ」
「あはは、そうだよねー、うっかりしちゃってさー。……うん、寒いなぁ……」
言いながら、つい光輝のコートのポケットに視線がロックオンしてしまっていた。
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