その中で指を繋いで

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 吐く息がほわほわと白く漂ってから、溶け込むように消えて行く。  それを見るふりで、あたしは隣を歩く光輝(コウキ)の顔を見上げた。  つい見とれちゃう、雑誌から抜け出てきたようなイケメン。それも、笑うとくしゃっとなって悪戯っ子みたいな表情になるのがまたきゅんとさせる。スポーティーなダウンコートをモデルみたいに着こなしている。  彼女がいないっていうのが、本当に謎。  単なる、大学の同期生以外の何物でもなかったあたしは、大学入試以来の涙ぐましい努力をして、ようやくこうして「他の女友達より一歩リード」の立場を得ることができた。  光輝が入ったサッカーサークルにマネージャーとして入り、せっせと大量の汗臭いタオルを洗ったり、汗臭いビブスを洗ったり、汗臭い……まぁ、とにかく努力したのだ。  「彼女」になるにはまだまだ道のりは長いが、こうしてそれとなく隣を歩くことはできるようになった。  星一つ見えない夜空だけど、光輝が隣にいるかと思うとそれだけで気持ちは晴れ上がる。 「あー寒っ! 夜中には雪降りそうだな」 「東京じゃ滅多にないけど……ずっと降り続いてホワイトクリスマスになったらいいね!」
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