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中学生のときだ。理科の教科書に、動物細胞や植物細胞のイラストが載っていた。これを何となく、水まんじゅうに似ていると思ってしまった。
それだけで、苦手になった。ぷよんとして透明感のある生地はそのまま細胞質みたいだし、あんこなんて大きな核に見える。
テレビなどで水まんじゅうを半分に切る映像が流れたときも、まるで命そのものを絶ち切っているようで怖かった。
水まんじゅうのありようは、僕に死を思い出させた。
ただ幸いなことに、僕の住む地域では水まんじゅうは名物でも何でもなく、あえて食べようとしたり、見ようとしたりさえしなければ、特に気にならない距離感でいてくれる和菓子だった。
何となく苦手だな、という僕の気持ちの核は、他の人に透けることなく生きてこられた。今後の人生でも、水まんじゅうとまっすぐ向き合う機会なんてきっと多くはないはずだ、とそう思っていたのだが──
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