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「ねえピッピ、もうすぐ目的地のお店につきそうだよ」
テレビ電話の向こうから聞こえてくる陽気な声。相手は歩きスマホで映像を送ってくるため、ホッホッという少し荒い息づかいも聞こえる。
僕はソファーに深く腰掛けて、横向きにしたスマホ画面を見ながらスピーカー機能で話しかけた。
「ちゃんと見えてるよユミ。それと、あんまり無茶しちゃだめだよ」
「だいじょうぶ。今日は調子が良いみたいだから」
ユミとはもう、十年来の付き合いになる。お互い趣味で小説を書いていて、投稿サイトで感想を伝え合ったのがきっかけだ。
本名も知っているが、SNSでの交流がメインのためハンドルネームで呼び合っている。実際に会ったことはないけれど、電話で話したことなら何度もある。
すぐに会えない距離だからこそ警戒も薄くて済むし、心も近づきやすかったのかもしれない。
とはいえ単純に気が合う、というのが仲良くできている一番の理由だろう。
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