水まんじゅうは水入らず

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   つい最近まではそれなりに健康だったはずだ。お互いに長い付き合いだし、一度くらい会って遊びたいね、と計画していた矢先で連絡をもらった。  予定では毎年秋頃に開催される大阪のイベントを一緒に回り、そのまま僕の観光を兼ねて岐阜の名所を案内してもらうはずだったのだ。  とはいえ、誰も悪くない話だ。運だって、悪くない。病気なんて、いつ誰のところにも友だちみたいな顔をして、ひょっこりやってくるものなのだ。  ユミは今、リハビリを兼ねて自分ができることの範囲を確かめたり、できないことと距離を置こうとしたりしている。  気が紛れるから、という理由で、今日は電話をしながらのリモート外出に誘われたのだ。 「ふぅ、休憩おわり。さぁて、また歩いてみようかな」 「今日のゴールはどこだっけ?」 「いまJRの大垣駅から南にまっすぐ進んでるんだけどね。今日のゴールは、よく冷えた水まんじゅうが食べられるお店。大垣は水が良いからね、おいしいんだよ。ピッピにも食べさせたいなぁ」 「水まんじゅう、かぁ……」  あんまり惹かれないなぁ、という想いがそのまま声に出てしまった。  
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