水まんじゅうは水入らず

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  「あれ? 水まんじゅう嫌いだった? 苦手な人ってそんなに聞いたことないけど。あっ、あんこが苦手とか?」 「あんこは好きなんだけど」  言っても伝わるだろうか、と思いつつ続ける。 「水まんじゅうってさ、なんか細胞っぽくない? あんこが核で、細胞質にくるまってる感じで」 「んー、ぽくないねぇ。そもそもそんなこと考えたことないし」  なにその考え、とユミは笑う。笑いながら、注意してきた。 「細胞だとしたら、あんこの核はいいとして、ゴルジ体とかミトコンドリアとか、他にも足りないものがあるでしょ」 「あー……なんか、そんなのも教科書に載ってた気がするね。リボソームだかリソソームだか、そんなのとか」 「いやまぁ、細胞の話は深掘りしなくて良いんだけどね。解像度が上がっても気持ち悪くなるだけでしょ。こっちは今から水まんじゅう食べるんだからさ、もっと食欲が出るような話をしてよ」  もぉ、と怒ってる振りをして笑う。  確かにユミまで水まんじゅうを苦手にさせる必要はないだろうから、食べ物の話に切り替えることにした。  
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