水まんじゅうは水入らず

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  「あ、食欲と言えばさっきの細胞の話だけど、なんとなくイタリアンっぽい感じがしなかった?」  ユミには僕の意図が伝わっていないらしく、イタリアン? と呟いて続ける。 「んん〜っ? 何の話だ?」 「いやさ、細胞の中の細かい名称って、わりと料理名っぽいなと思って。本日のメインは魚料理で、ゴルジ鯛のリソソースがけでございます。あとミートコーンドリアもお待ちいたします、的な」 「的な、ってカッコよさげに締められても知らんわ! って返しちゃうわよ。で、まだ細胞の話を続けちゃうの?」 「ほら、僕って単細胞だからひとつのことしか出来なくて」 「はいはい……ってほら、話してるうちにお店に着いたよ。まぁ、気が紛れて助かったけど。はい、ピッピにも見せてあげるね」  ユミはテレビ通話に切り替えて、店先に並んだ水まんじゅうを映してくれた。 「見える? 大垣の水まんじゅうは一つずつお猪口に入っててね、冷たい地下水で冷やされてるんだよ」 「これは……へえ、こんな風に売られてるんだね。初めて見たから、ちょっとびっくり」  水まんじゅうと言えば、これまでスーパーでプラスチック容器に四個入りとかで売られているのを見るくらいだった。  それがここでは一つ一つ容器に入り、銀色のトレイの中に何十個も敷き詰められ、絶えず冷やされ続けているのだ。  
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