世界を覆う雪

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 部屋に戻ると、ベッドの横に小さなチェストがあることに気がつく。  中を確認すると、頭のてっぺんから手先や爪先まですっぽり隠せるタイプの防寒着が入っていた。色は私の大好きな黄色。もしかしてお父様が用意して下さったのかしら?  防寒着を着て再び階段を登り、今度こそ外に出る。  降り積もった雪に足を取られながら、真っ白の世界を懸命に歩く。ずっと眠っていて体力が落ちたのか、直ぐに疲れてその場へと佇む。  そっと両手を開いて掲げ、絶え間なく降り注ぐ雪を手の平へと集める。  こうして雪を見ていると思い出す。お父様と一緒に遊んだ時のことを。それはとてもとても素敵で大切な、かけがえのない大切な思い出だ。  お父様とまた雪遊びをしたい、私はそう強く決意して再び歩き始める。お父様は一体どこにへらっしゃるのだろう? お家かしら? 当てなどない。だって雪に覆われたこの街に建物などひとつもないのだから……。
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