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ユキはその場に伏せって言う。
「それでは探しに参りましょう、お嬢様。さぁどうぞ、わたくしの背中にお跨がり下さいませ」
「探しにって、お父様を?」
そう訊ねると、ユキは淡々と事務的に答える。
「博士は既にお亡くなりになっておられます」
大きく目を見開く。でも、そんな気はしていた。散々に朽ちた街には人や動物の気配はない。だからきっとお父様も……。
ユキは再び立ち上がると、朗々と、そして簡潔に事実だけを話す。
「世界は滅びました。世界規模での核戦争の末、文明や人類は死に絶えたのです。この街の上でも核爆弾が爆発し、博士はそれによって命を落としたのです」
ぼんやりと、眠りにつく前のことを思い出す。
お父様は私をカプセルのベッドに寝かせて、涙ながらに言っていた。
──ネーヴェ、どうかお前だけでも生き延びてくれ
……だけど、お父様。誰もいない世界で一人で生き残ったってどうしようもないじゃない。
本当はお父様が亡くなっていることを悲しまないとならないのだけど、感情が全く動かない。
雪で覆われたこの街ですら私には広すぎるのに、世界にたった一人だなんて途方に暮れるしかないのだから……。
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