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「さぁ、それでは参りましょうお嬢様」
ユキは相変わらず私をどこかへ連れて行きたそうだが……。
「こんな滅んだ世界のどこへ行くというの?」
どこへ行っても何もない、誰もいないならどこにも行かないのと同じだ。
ユキはこくんと頷く。
「わたし達は博士からのラストオーダーを達成しなくてはなりません。即ちそれは荒廃した世界を巡り、お嬢様以外の人類を見つけて再びこの世界を繁栄させることにございます」
「……私以外の?」
「はい。お嬢様がこうして生きていらっしゃるように、広い世界には何らかの方法で核の脅威を逃れた生存者が必ずいると博士は考えたのです」
それは何の確証もない話だった。だけど、お父様が「必ず」というのならそれは絶対だ。お父様の「必ず」が外れたことはないのだ。
世界を繁栄させる……それはよく分からないけど、ずっとこの街で何もしないでいるよりは何か目的があった方がいいと私は考えた。
「分かった、行こう。ユキ」
ユキの頭を撫でる。するとユキは固そうな尻尾をカクカクと揺らした。
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