未練

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 まっ直ぐに見つめる視線に対抗するかのように、僕は両手をズボンのポケットに入れて君を見返した。  だけど、その強いまなざしにひるんで思わず顔を背けた。  君は何も言わずに向こうを向き、歩き出した。  僕は顔を上げ、じっとその背中を見つめるだけだった。  少しずつ遠のいていく細い後ろ姿。  不意に君は足を止めて僕の方へ振り向いた。  寂しげな笑みを浮かべると、小さく手を挙げて、ゆっくりと振る。  僕は身動きもできずに、ただ、そんな君を見つめていた。   君は寂しげな笑みのまま前を向き、再び歩き出した。  僕は近くまで走って行って、その肩に手を置いて君を引き留めたい衝動にかられた。  だけど、やっぱり何もできずに、ただ立ち尽くして小さくなっていく君の姿を見ているだけだった。  遥か彼方と思えるほど先で、君はまた足を止め、僕を見た。そして手を空に向かて伸ばすと、大きく振った。  何度も、何度も。  遠すぎてもう、君の表情を見ることはできなかった。  僕は凍り付いたようになって、ただその姿を見つめるだけだった。両手はズボンのポケットに入れたままで、やっぱり君に応えてやることはできなかった。  君は振っていた手をおろすと、向こうへと駆け出した。  僕はその姿が見えなくなるまで見続けた。  僕の両手はずっとポケットの中だった。               終わり
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