プロローグ

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プロローグ

ここはどこだろう。 長い長い距離を歩いてきた気がする。 文句のつけようも無いような青空と、懐かしいような入道雲。 そこへまっすぐ伸びる道は、どこへ続いているのだろう。 わあわあと聴覚を埋め尽くす蝉時雨がまた、どこか切ないような気持ちにさせる。 戻ろう。 そう思ったとき、ふっと蝉時雨が鳴り止んだ。 「戻ってはいけない」 え? 「そっちは来た道じゃないから」 道の先に、ゆらりゆらりと蜃気楼に溶ける人影があった。 どうして? 尋ねようと口を開こうとすると、ふわりと人影は空に滲んで霧散してしまった。 再び蝉時雨が世界を埋め尽くす。 あぁ、そうだ。思い出した。 戻らないと。 この先には行かないと決めたのだから――
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