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 潮風を受けて、セーラー服の襟が私の首をくすぐる。私はさっきリップを塗り直したばかりの唇にくっついた髪を片手でよけながら、いち、に、さん。心の中で数える。そっと目を開けて、一息に言った。  私がマモちゃんのためにできる、最後のこと。 「別れよう」  彼が来るまでに何度も練習した言葉。  隣で俯いていた彼が、私の横顔に目を向けたのがわかる。私は彼のほうを見ない。見たら決心が揺らいでしまいそうだから。酷いことを言って、すがって、苦しめてしまいそうだから――。
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