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ススメ若人よ
近藤は、あの日のあの言葉から祥子の事を考えることをやめた。
お互いに別の道を進むことが正解だったと思い、仕事を一番に考える日々。
新たな恋など考えもしなかったし、出会う機会がなかった。
そんな近藤の部署に、半年前から池田涼子という女性が中途採用された。
近藤の3つ下だったが、整った顔立ちと気立ての良い性格で、同い年といっても遜色なく、仕事も人付き合いも卒なくこなしていた。
この日も、朝から部長の富田が涼子を自席に呼んだ。
富田のネチネチした性格から、喜んで行くやつはいない。
富田に呼ばれると、全員が真面目な表情を作ってから、富田の席を訪れるのだが、涼子は笑顔で接していた。
「涼子君!昨日頼んだ書類できてる?」
「はい。部長。できてます」
「流石、仕事が速いなぁ。鈍間な男どもと大違い!じゃ、その書類、デスクに持ってきてくれないか?」
「えっ?もう提出してありますよ」
「うん?どこにもないぞ?どこに置いたんだ?」
「部長のPCです。メールに添付して書類送信してますけど……って、毎回そ
れ言ってますよ」
「おお?そうだったかな?まぁ、ペーパーレスの先取りってやつね」
「はい。部長、今はオンラインで仕事する時代です。わざわざ出社も時間と交
通費等、経費の無駄ですよ。なんで、うちは、通勤義務があるんですか?」
「ああ~それね。会社に来ないと退屈で死にそうになっちゃうんよね~。可愛い涼子君の顔も見れなくなっちゃうしね~。楽しくないよねそれじゃ。在宅勤務にしないのはそういうことね」
「部長?それって?もしかして、私に会いたくて来てるってことですか?」
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