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笑顔の答え
近藤と山岸が、行きつけの居酒屋で飲んでいるのと同じ時間、涼子は、約束通り富田とディナーを共にしていた。
一通りの料理は食べ終え、食後のコーヒーを飲みながらの会話だ。
「今日が人生最後の日だとしたら、どんな一日を過ごすか想像したことあります?」
「ん?」
「友達が言ってたんですよ。友達は、ここの高級ディナーを死ぬほど食べたいって」
「へぇ~。涼子君はどうしたい?」
「私は、大好きな人と一緒にいたい。何もしなくていいから、ただ一緒にいたい」
自分の事だと勘違いした富田は、大きく頷いた。
「そ、それなら、出来る。出来るとも!」
「ふふふ。彼女が羨ましいです。私も、そういう彼氏が欲しいです」
富田が独身であること。さらに彼女がいないことも涼子は知っていた。
これは、涼子にとって防衛策だ。
立て続けに守備を固めていくために富田に言った。
「私みたいな小娘と食事に行っても許してくれる彼女さんって、さすがですよね。どんな女性なんですか?」
「あ、あの彼女は、」
富田が、彼女はいないと言う言葉を発する前に、涼子は続けた。
彼女はいないから、付き合ってほしい。そういわれる気がしてならない。
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