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「うん?夫婦?」
首を傾げる近藤に構うことなく、涼子は笑顔で答える。
「そ。理想の二人ってことですよ」
「なおさら、ハテナだ。俺の頭の上に?マークたくさん見えるだろ?」
「見えないです。これっぽちも」
「ま、いいや。にしても、真面目な話も出来んだな」
「まぁ、それなりには……フェイク情報ばかりが溢れてるから、現実の裏側で起こってる正体が見えなくなってると思うんです。会社で組織人間やってると、本当に都合主義じゃないとやってられない時あるし」
少しだけ暗くなった涼子の表情に、いつも笑顔の彼女も、それなりに考えているのだと、人には見せない彼女の裏側を見た気がした。
「笑顔と話術で乗り切る世渡り上手だと思ってたけど、予想外。大変だな。冗談抜きで……」
「ま、そういう風に思わないでください。キリスト様だって、大衆意識に抗いながら、人々を真実に導こうとして生きて、結局無実の罪で最後は十字架ではりつけの刑にさせられちゃった。宗教には関係なく人間って、死に逝く者でしょう。だから……」
話が支離滅裂になりそうだなと思いながらも、涼子が真面目に話すのに水を差すのも気が引け、近藤は続きを聞こうと思った。
「だから?なに?」
「だから、集団心理って神様よりも怖いってこと。今の時代って、本当の自分はどう生きたいのか?って真剣に考えて生きていないと悪魔に魂まで抜き取られちゃう。そんな感じがしてるの」
「宗教の勧誘か?」
「違います」
「まぁ、誰でもさ、同じ船に乗って、ドンブラコドンブラコって、同じ方向に流されてると、楽なんだよね。自分が思考停止してるって思わなけりゃ、疑問は持たなくてもいいし……こんな時代だから、クリスチャンも神様も関係ない……さっき池田もチラリと言ったけど、周りはオポチュリズムばかりだよな」
「ですよね。そこは分かってくれるんですね。またハテナ浮かんだらどうしようかと思いました」
「ま、そこまで馬鹿じゃないからな」
シガレットケーズから煙草を取り出す近藤。涼子のペースであることは分かっていた。
一服した後、自分なりに主導権を握れる話題に変えてやろうと思っていた。
「あ!近藤さんタバコ吸うんですね」
「あれ?知らなかった?」
「えぇ。初めて見ました」
「そっか。確かに会社じゃ吸わないからなぁ」
「この際、止めたらどうですか?」
「止めたら死んじまう。ニコチンスモーク欠乏症で」
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