名もなき喫茶店にて

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「その話より、さっき言った嘘の意味知りたいんだけど」 「それは近藤君が、惨めにって言うから……結婚って惨めじゃないよね?」 「まぁ、お前がそう思いたいんなら、それでいいんじゃね?ただ、何事にも、アジェンダがあって、恋も金儲けもリスクがつきものなんだって、松田は言ってた」  知らないところで近藤と松田が、自分の事を恋愛対象ではない話をしていると思うと祥子は良い気持ではなかった。 それ以上に、リスクという言葉が引っかかった。 「リスク?私との付き合いもリスクがあるってこと?近藤君もそう思う?」 「聞くんなら松田だろ?俺に聞くのは違うだろ」 「あ、それ!私と松田さんてどう思うか、答えてよ」 「結婚すんだろ?俺の考え聞いてどうすんだ?」 「あ、なんか冷たい……」 「何でだよ?他人の色恋沙汰なんかメンドクサイだけっていつも言ってるだろ。本人同士の問題に巻き込むなって」 「確かにね。でも突き放すような感じじゃない?気に入らないの?」 「は?」 「私の結婚・・・・・・」 「ま、少しはある。企業の戦略と分かっていて一緒になるんだろ?それこそ俺の出る幕じゃないし……」 近藤の煙草の煙につられるように、祥子も近藤の煙草を手に取り、煙を吐いた。 「答えになってないよ」 「は?この答えの流れだろ。俺にどうしろって?」 「はぁ~。なんでわかんないのかなぁ……」 祥子の、か細い声は近藤には届いていない。 「は?なんか言った?」 「……今日が人生最後の一日だと思って楽しみましょう」 「おいおい。いきなり大袈裟だな。ま、独身の終了は近づいてるけどな」 「岡村祥子はいなくなるのよ。これって事件なのよ」 「確かに。でも、事件ねぇ……であっても、人生最後と知らされて楽しめるとでも?」 「最後だからこそ楽しむのよ。後悔しないようにね」 「ま、そういう考え方もある。けど残された人を考えると……」 「私の人生最後じゃなくて、相手も含めて、人類最後の一日だったら?」 「怖えよ。そういうのやめろって」 「考えたことない?明日は必ず来るわけじゃないのよ」 「考えたこともない。明日は明日の風が吹くっていうだろ?」
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