名もなき喫茶店にて

3/4
前へ
/23ページ
次へ
「容赦なく吹く、世間の冷たい風?だとしたら、風の様に吹き抜けて行けばいいよね。時代は風の時代に移ったんだから」 「よく分らんけど、いきなり話飛びすぎだ。で、風って?風にも色々あるからさ」 「うふふ。今日の私は暴風雨だったかしら?」 「台風だろ……あっ!そういえば台風接近してんだろ?」 「大丈夫よ!私は出ないから」 「俺は、買い出し行かなくちゃ」 「晴れてるから、今日のうちに行ってくれば?ま、私に近藤君の私生活興味ないけど」 「興味持たれても困る。あ、そういえばティッシュを買わないとな」 「やっぱりね。一人でティッシュ使いすぎよ。何をしてるのかしらねぇ」 「いや、あ。その、男の嗜み?」 「じゃ、早くいかなきゃ売り切れちゃうよ~。気をつけてね~」 「お?今から行かせる気か?」 「思い立ったが吉日よ」 「ま、ちょっと行ってくる。ティッシュじゃないぞ。タバコが切れたからだ」 「そう?隠さなくてもいいのに」 「うるせぇ。ちょっとコンビニ行ってくる」  近藤が店を出ると、祥子にこの店の看板娘であるアキがコーヒーポットを持ってきた。 看板娘とはいうが、それなりに歳は重ねている。 だが、年齢よりも相当若く見える、妙齢の女性だ。 「結局、話を脱線させたけど、話が伝わってないみたいね」 「あぁ。アキさん。聞いてたの?」 「聞こえちゃったのよ。コーヒーのお替りいるでしょ?」 「いただきます」 「で?松田祥子になる決心はついたの?」 「するしかなさそう……って、アキさん、嬉しそうね」 「そう?」 「あ!ちょっとニヤッとした」 「ふふふ。そう見えた?」 「アキさんならどうする?」 「もちろん好きな相手を選ぶわ」 「親を裏切るような恋でも?」 「自分の人生だからね。親にはメッチャ謝るけど」 「う~ん……」 「即答できないなら、そういう事じゃないの?」 「……実は、ショックなんだよね」
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加