名もなき喫茶店にて

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「マリッジブルー?」 「だよ。アキさんみたいに考えられたら近藤君を選んでるよ」 「ほぉ?」 「でも、分った。近藤君、私のこと見てくれてないや。ほんと、それがショックだわ」 「そうかなぁ?祥子ちゃん一筋だと思ってたけど」 「私も、そうだと思って、最後の最後に期待したんだ……けど、気づいてくれなかった」 「ぅん……近藤君は鈍感だもんね」 「人類史上最高のね。だとしても止めてほしかったんだ」 「ま、それは分かる。」 「結婚するなっていってほしかったんだ」 「祥子ちゃん……」 「どうしようもないんだけどね」  自分の人生なのだから、アキの言う通りなのかもしれない。 しかし、生まれた家柄の呪縛は、その思考すらも縛り付けていた。 家族を裏切ることは、自分自身の人生すら歪めてしまう。 涙腺が決壊しそうなのをこらえながら、いつもと同じように近藤と接していた祥子。  これ以上話したら、色々と考えてしまい、一番見せたくない相手に涙を見せてしまうかもしれない。そう思うと、話を脱線させてでも近藤と離れたかった。 「コンビニなら、すぐ帰ってくるだろうけど……普通には話せないや……」 「…送ってくよ。今日は帰ろ。その方が良くない?」 「そうかも……」 望みはしない最後だった。 その気になれば叶えられたかもしれない。 だが、この場に近藤がいないことが、祥子の出した答えだ。 さっきまでの時間が、長年想いを寄せた近藤と過ごした最後の時間だった。
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