待ってない

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 そう聞かれても、なかなか言葉が出てこない。 言葉が出ずとも、祥子から急かすような言葉もない。 どれくらい沈黙が流れただろう。 「祥子。幸せになれよ」  この言葉に感情を精一杯込めた。 本当に幸せになってほしい。だからいつものように茶化すことはしない。  それを聞いた祥子の目からは大粒の涙が止めどなく流れた。 受話器の向こうで祥子が、すすり泣く。自分が泣かせておきながら、近藤もこみあげてくるものを抑えきれないでいた。    返事ができない理由も、近藤なりに分かってはいたが、返事を聞くまでは、伝わっていないのではないかと思い、つらいのは承知で、もう一度言った。 「しょ、祥子?聞いてんのか?幸せに…な」 「わ、分かってる……わかってるから……何回も言わないでよ……私……」 幸せにって言葉は、二人にとっては、さようならと同じ意味であると分かっていた。    
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