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……あれからもう1年。本当にあっという間だったな。
私は入り口からベッドルームに戻る。
すっかり目が覚めてしまって、とても二度寝する気分にはならなかった。
しょうがないので眠るのは諦め、バスタブにお湯をはって湯船に浸かることにする。
高級ホテルのスイートルームなだけあって、パウダールームには有名ブランドのバスグッズが揃っていた。
お湯がたまったところで、私はそのアメニティの中からローズの香りのバスソルトを手に取り、バスローブを脱ぎ捨てて浴室へ。
エレガントで華やかな香りが広がる中、肩までお湯につかり身体を温める。
ホッとした心地で一息つくと、今度はぼーっとしてきて、ついあれやこれやと物思いに耽ってしまう。
なんとはなしにお湯の中で身体を自分でマッサージしつつ、考えるのはやはりこれからのことだ。
……このまま恭吾さんと結婚。つまり恭吾さんが私の旦那様になるわけで、これからも今の延長線上の生活が続くのね。
今は別々のところに住んでいるが、結婚すれば一緒に暮らすことになる。
正直、今との変化といえばそれくらいだろう。
きっと恭吾さんは変わらず忙しくほとんど家にいないだろうし、顔を合わせた時には食事を一緒にとって、身体を重ねて――そうして日々が過ぎていくに違いない。
そのうち子供ができて、私は仕事を辞めて専業主婦として子育て中心の生活になるのだろう。
父は昔気質な考え方の持ち主で、女は仕事なんかせずに夫を支え家を守るものだと思っているから、むしろ私が仕事をするのもよく思っていない。
きっと家のために早く子供を産んでくれることを期待している。
これまでも父の望んだ通りの道を歩んできた。
東條家に生まれたからには、そういうものだと思っていたし、それに抗うつもりは全くない。
だから、恭吾さんとの結婚だって全然嫌ではない。
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