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まあ、どんな嘘っぽい噂話でも、
「すごいねえ。あの電車、チカンが出るってよく聞くもんね。これでいなくなってくれればいいんだけど」
噂話が影響して、チカンなんかいなくなれば、こんないい話はない。
メイだって朝夕、通学に使っている電車なのだ。
「颯爽と現れて助けてくれるなんて、東郷くんって完全にヒーローよねえ」
茅優はうっとりと頬を染めている。
「ヒーローかあ」
確かに、東郷にふさわしい称号だ。
似合っているし、誰もが認めるだろう。
すると、
「まあ、メイには汐屋くんがいるじゃん」
茅優が思わせぶりな顔で、小さく言ってきた。
「守ってもらってるんでしょう」
「へ、三波?」
思わず、机で突っ伏して寝ている、汐屋三波を見てしまう。
汐屋三波は、メイと小学校から一緒の幼なじみだ。
家も近所で、だから一緒に登下校しているだけ。
それを、
「守ってもらってる」
なんて言われても困る。
「え、違う違うよ」
首を振った。
「親同士が仲が良かったから、なんとなく一緒にいるだけだよ。登下校が一緒なのも、ただの子どもの頃からの習慣」
「たとえそうでも、汐屋くんがいるから、チカンも近づいてこれないって話じゃん。メイはチカン被害にあったことないんでしょう」
「……ない」
それは事実だ。
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