1 モテ男子と冴えない幼なじみ

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まあ、どんな嘘っぽい噂話でも、 「すごいねえ。あの電車、チカンが出るってよく聞くもんね。これでいなくなってくれればいいんだけど」 噂話が影響して、チカンなんかいなくなれば、こんないい話はない。 メイだって朝夕、通学に使っている電車なのだ。 「颯爽と現れて助けてくれるなんて、東郷くんって完全にヒーローよねえ」 茅優はうっとりと頬を染めている。 「ヒーローかあ」 確かに、東郷にふさわしい称号だ。 似合っているし、誰もが認めるだろう。 すると、 「まあ、メイには汐屋くんがいるじゃん」 茅優が思わせぶりな顔で、小さく言ってきた。 「守ってもらってるんでしょう」 「へ、三波?」 思わず、机で突っ伏して寝ている、汐屋三波を見てしまう。 汐屋三波は、メイと小学校から一緒の幼なじみだ。 家も近所で、だから一緒に登下校しているだけ。 それを、 「守ってもらってる」 なんて言われても困る。 「え、違う違うよ」 首を振った。 「親同士が仲が良かったから、なんとなく一緒にいるだけだよ。登下校が一緒なのも、ただの子どもの頃からの習慣」 「たとえそうでも、汐屋くんがいるから、チカンも近づいてこれないって話じゃん。メイはチカン被害にあったことないんでしょう」 「……ない」 それは事実だ。
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