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北斗は、
「事実はどうあれ、和解を目的に示談金を支払うという話はあることです。ただ示談金を支払ってまで大事にしたくなかった事柄を、東郷さんという目立つ存在が許さなかった。
彼はというか、彼の取り巻きの方々が、チカンの話をあちこちで吹聴して回っていたそうですね。トラブルの原因はむしろ、そちらの噂話の方ではないでしょうか」
と言った。
言われてみれば、メイも、茅優の口から、東郷がチカンを捕まえた話を聞いている。
チカンした男のことも、大柄な社会人だとか、でもいい年をしたオヤジだとか茅優はおもしろそうに語っていた。
もっと聞けば、犯人はどんな容姿だったとか、どこの会社勤めているとかも教えてくれたのだろうか。
「目立つことはトラブルの原因にもなるんですがねぇ。東郷さんも、その辺りのことが甘い」
北斗は困ったように眉をしかめた。
しかめながら、ふと、冷めない豆腐に悪銭苦闘している三波を見下ろした。
「三波にも同じことが言えますよ。メイに体術を教えたそうじゃないですか。そんな目立つことをして、どうする気だったんですか」
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