今日はなんだか優しい。

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今日はなんだか優しい。

 はあ、とため息をつく。  気が重い。  別にいつもだって、やったぜ今日も楽しみだ、なんて思いながら仕事に行くわけではないが、それにしたって今日は気が重い。  完全に自分のミスによって周囲に迷惑をかけてしまった。  そのせいで昨日も遅くまで会社に残ったが、続きは今日また改めて、ということになって帰された。  うるさ型の上司が昨日たまたま不在だったこともあって、本格的なお説教は今日これから。  やってしまったことは仕方ないので、説教だって甘んじて受けるけれど、でもやっぱりそのことを考えるとお腹の下の方が、ずん、と重くなって、食欲もなくなる。 「どうした、マキ」  最近お気に入りの、朝日の差し込む窓辺で日向ぼっこをしていたとりが、私の今朝何度目かのため息に振り返る。 「元気ないな」 「まあね」  とりに話しても仕方ないのだけど、誰かに聞いてほしくて話してしまう。 「昨日ミスしちゃったから、今日怒られなきゃいけないの」 「あー、昨日遅かったもんな」  とりはふこふこと頷く。 「仕事たいへんだな、マキ」 「うん。大変なの」 「辞めてもいいんだぞ」 「辞めたらどうやって食べてくのよ」 「かすみはタダだぞ」 「私はかすみじゃ生きていけません」 「そっかー」  とりは、ふむ、と考えてくちばしの下に手羽を持っていく。 「人間は不便だのう」 「人間に作られたくせに何言ってんの」 「まあしっかりと怒られてきなよ」  とりはそう言って、また窓の方にふこりと向き直る。 「帰ってきたら、たくさん慰めてあげるから」  うそつけ。  帰ってきたら大体ねこと一緒に遊んでて、私のこととか忘れてるくせに。  そう思ったけど、なんだかとりの優しい言葉が嬉しかった。 「ありがとう」 「ましてー」  雑にとりが返事する。それも力が抜けるきっかけになった。 「いい天気ー」  そう言いながら、ねこが窓辺によじ登ってきた。 「ぜったい今日、いいことあるよ。こんないい天気だもん」  目をキラキラさせて(……るように見えた)ねこが言う。 「そうかもね」  そう答えて、私は顔を洗うために立ち上がった。
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