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今日は新聞を読んでいる。
今日のとりは、やけに熱心に新聞を読んでいる。
うちは新聞を取っているわけじゃないので、それは実家からの仕送りの包み紙に使われていた一か月くらい前の新聞だ。
もちろん、サイズ的に新聞を手に持って読めるわけではないので、新聞紙の上に乗っかって、読みたい記事を拾い読みしている。
「とりさん、なんて書いてあるのー?」
とりにいつも金魚の糞みたいにくっついているねこが尋ねている。
ねこをつかまえて金魚の糞というのも変か、などと私がつまらないことを考えていると、とりがやけにもったいぶった声でねこに解説していた。
「今年の冬はあったかかったからねー。夏はれいかになるみたいなんだよ」
冷夏。良く読めました。
「れいかってなにー?」
「れいかはれいかさー」
「そっかー」
それからまたとりはふむふむと新聞を読み始める。
ねこはその隣で別に新聞を読むわけではないが、一緒になって、ふむふむ、と言っている。
「とりさん、どうー?」
「野菜が値上がりするかもってさー」
まだ冷夏の記事を読んでたのか。
「野菜食べられなくなっちゃうのー?」
「そう。マキがね」
余計なお世話だ。
ちなみにこいつらはぬいぐるみなので、何も食べない。
前にとりに聞いてみたら、「霞を食べている」という仙人のような答えが返ってきた。
「マキ、野菜今のうちに食べときなー」
ねこがありがたいアドバイスをくれる。
「それか野菜が値上がりする前に給料上げてもらいなー」
とりは無茶を言う。
「あんまり新聞紙の上を歩き回ると、黒くなるよ」
私が言うと、二人は慌てて新聞紙から飛び降りた。
お互いにお尻を見せ合って、黒い?大丈夫?とか言い合っている。仲のいいことだ。
それを横目に見ながら、私は黒いコーヒーをすする。
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