今日は迷子を預かっている。

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今日は迷子を預かっている。

 仕事から帰ると、とりとねこが迷子を預かってくれていた。  迷子といっても、あれである。相方がどっかに行ってしまった靴下の片割れである。  いや、どっかというか、どこに行ったのかは分かっている。この間うっかり片方だけ洗濯してしまって、先に衣装ケースにしまったからだ。 「あ、ほら。担当者が帰ってきたからね」  とりが優しく靴下に話しかけている。 「もうすぐ迎えが来ますよ」 「よかったねー。お母さん来るって」  二人に代わるがわる話しかけられている靴下を見ていると、なんだか本当にうなだれた迷子みたいに見えてくるから不思議だ。 「どこにあったの、その靴下」  そう尋ねると、とりが気持ち胸を張る。 「そこの隅で泣いているところを、本官が保護しました」  本官って誰だよ。 「そしてこの迷子センターでお預かりしていました」  ねこも胸を張る。  迷子センターってどこだよ。  二人ともあんまり胸を張ると、ぬいぐるみとしての寿命が縮むからやめた方がいいといつも忠告しているのに。 「ありがとう、ご苦労様」  そう言って靴下を手に取ると、二人が盛大に見送ってくれた。 「元気でね、もう迷子になるんじゃないよ」 「これからは離れ離れになっちゃだめだよ」  衣装ケースを開けると、ちょうどもう片方がすぐそこに入っていた。  一緒にして、しまってから戻ると、とりとねこの前にピアスの片割れが置かれていた。  この間つけようとして落としてしまったやつだ。ベッドの下に転がり込んでしまったけど、その日はもう出なきゃいけなくて、帰ったら拾おうと思って忘れていたんだった。 「ほら、担当者が来たからね。もう大丈夫だよ」  とりがピアスに話しかけている。  そのお腹にほこりがついている。  まったく。ベッドの下は汚れるから入るのはやめろって言ってるのに。 「とりさん、明日洗濯ね」 「え」 「僕も! 僕も洗濯!」  洗濯機でぐるぐるまわるのが大好きなねこが元気に手を挙げる。  とりは洗濯があんまり好きじゃないので固まっている。 「見付けてくれてありがとね」  そう言ってピアスを摘まみ上げると、二人はまた盛大に手を振る。 「もう離れ離れになるんじゃないよ」 「相方さんと仲良くね」  ピアスをしまってから、次は何を保護しようかとごそごそしている二人を尻目に、私はポテトチップスの袋を開けた。
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