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今日は箱で遊んでいる。
小さめのお菓子の箱が空になったので、蓋を取った下の箱だけをとりとねこにあげてみた。
さっそく二人でそれに入って遊んでいる。
サイズ的に、とりのお尻にぴったりフィットしている。ねこには少し大きいようだ。
二人でしばらくその箱に並んで入っていたと思ったら、うえー、とか、ういー、とか、ゾンビみたいな気持ち悪い声を上げ始めた。
「ど、どうしたの」
慌てて尋ねると、とりがこっちを見もせずに答える。
「銭湯に来てます」
「ういー」
ねこがまた唸っている。
ああ、この箱をお風呂に見立てているのね。
本当のお風呂(洗濯)はめっちゃ嫌がるくせに。
見ていたら、ノリノリのとりに、「おい姉ちゃん、水でぬるくするんじゃねえよ」と注意された。
何となく言ってみたかったのだろう。だけど姉ちゃんがいたら、混浴じゃないか。
しばらく放っておいて、テレビを見ながらジンジャーハイボールを飲んでいたら、箱からねこだけが出てきた。
とりはまだ箱の中にいて、そっぽを向いている。
ねこはそのままぽてぽてと部屋の隅のほうに行ってしまった。
あれ、けんかでもしたのかな。
ちょっと心配になって見るともなく見ていると、ねこがまたどこからともなく姿を現した。
ぽてぽてと箱の方に近付いていく。
箱の前で止まったねこは、何かを押す仕草をした。
「ぴんぽーん」
「はーい」
とりがドアを開ける仕草をして顔を出す。
「あら、ねこくん。どうしたのー」
「ちょっと近くまで来たものだから―」
「そうなのー? まあ、入って入って」
「わるいわねー。お邪魔しまーす」
けんかではなかった。
銭湯ごっこをお宅訪問ごっこに切り替えただけだった。
「これ、よかったらー」
「えー、いいのー?」
きゃっきゃと楽しそうに遊ぶ二人を眺めてから、私は二本目のハイボールを取りに立ち上がった。
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