一、初夏、小さな果樹園《ヴェルジェ》にて

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《三人ともトピアリー・ガーデンの整備を全般をやってくれている。あと一人、池や小川の管理をする男がいたんだが、先週末に辞めてしまってね。後任を探さないといけない》  ギヨームさんが困ったように微笑んだ。 《それじゃ、頼むよ。しばらくはマルコについてやってくれ》 《マルコだ。よろしく》  マルコさんが口端をあげて握手を求めてきたので握手を交わした。 《よろしくお願いします》   静かな微笑みを浮かべたオトュールさんも握手を求めてくれた。けれど、アルマさんは肩に庭道具を担いで小屋を一足先に出て行ってしまった。 「気にしないでいいさ。アルマは誰にでもああなんだ。でも腕は最近の若いもんの中ではピカイチさ。スピード勝負の庭仕事をしたら彼女の右に出る者はいないね」  マルコさんが日本語で話しかけてくれた。 「日本語話せるんですね」 「七つ下の妹が結婚して日本で暮らしているのさ。妹も庭師だ。日本庭園が大好きでね、調べているうちに俺も日本語に詳しくなった。ここにつくばいを作りたいってギヨームに言ったら考えておくって言われてもう十年だからそろそろ俺も引退かもしれない」  マルコさんは肩を竦めて笑った。ジョークを飛ばす明るいノリは性格なのだろう。 「マルコ、悪い冗談はやめてくれ」  これ以上誰かに辞められたら困るよ、とギヨームさんも肩を竦めておどけて笑う。そしてあとはよろしくとメンバーそれぞれに声をかけて小屋を出て行った。 「さあ、行こう。庭と太陽が俺達を待っている。なあに、君は筋がいいとポールから聞いているから何も心配はしてないさ」  にかっと歯を剥き出してマルコさんは笑うと、整備に使う庭道具の場所を教えてくれた。そしてリヤカーに庭道具を二人で積んで、私の持ち場である城の裏手の”白鳥の庭園“に行った。
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