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「ほんとに心当たりねーの?」
「ない」
「このビルには?」
「バイト先の道路の向かいにあるビルだと思うけど」
俺はバイト先の喫茶店から見える景色を思い出しながら答えた。
たしかこんな名前のビルがあったはずだ。
「今日バイトは?」
「ないな」
「じゃ、行ってみれば?」
「わざわざ?」
「わざわざ」
優正がどことなく楽しそうに言った。
他人事だと思ってる顔だ。ここは巻き込んでやろう。
「お前も来るなら行ってもいい」
「じゃあ行こう! その前に飯だ! ほら、順番来たぞ」
知らないうちにポケットの中に入っていた紙に書かれていることを、真に受けるのもバカらしい。けれど、なぜか胸騒ぎがするのは俺だけだろうか。
嫌な予感と言うのはよく当たるものだ。今回は外れてくれることを願いながら、気を取り直して財布の小銭入れを開けた。
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