22時

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「黒髪ロングにピンクのコート。確かに特徴は同じだな。でも顔は見てないんだろ?」 「見てない」 「……なぁ。ぶつかった時に、その女の人が玲輔のコートのポケットに紙入れたっての、あり?」 優正は突飛な話をし始めた。 すれ違いざまにポケットの中に紙を忍ばせるとか、さすがに映画の見すぎだろ。 「そのぶつかった人があそこで倒れてる人かもしれないんだろ?」 「それは……まぁ、そう」 その時、遠くで聞こえていたパトカーと救急車のサイレンが近づいてきた。 あまりの驚きに通報するという動作を忘れていたが、すでに誰かが通報してくれていたようだ。 車両から慌ただしく救急隊や警察が出てきた。 「あの紙、今回の事件に関係あんのかな」 「どうだろうな。もしかしたら、被害者じゃなくて犯人が入れたのかも」 「犯行予告ってこと? 俺に?」 「……うーん。ないか。あ、本当は狙ってるのはお前だったけど、22時にお前がいなかったんでたまたまこの場所にいたあの女性が狙われた……とか」 優正の仮説に背筋が寒くなる。 優正は俺が固まっているのを見て、慌てたように「そんなわけねーよな!」と自分の仮説を否定した。
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