婚約破棄は突然に

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 拝啓、前世のお父様、お母様。  わたくし、夢でも見ているのでしょうか?  もしもそうなのであれば悪夢の類いです。  今世のわたくしの兄が、前世のお父様と同じ名前だったのは、そう珍しくもない名前だし偶然なのでしょう。  それよりも……ですわ。 「イレーネ! 貴様との婚約を破棄する!!」  何を仰っておりますの、クロードお兄様!? 「幼少期より決められていた婚約。だが貴様は、私を愛することはなかった」  お待ちになってクロードお兄様、まだ幼いですわ。なぜ七歳にして『幼少期』発言をしておりますの!?  わたくしたち、まだ充分幼いですわよ!?  これから大人になるまでに、愛を育んでいく時間も充分にあるとわたくしは思いますわ。 「そしてあろうことか、私に近寄る令嬢たちへと嫉妬し、嫌がらせをしていた!」  それに関しては誤解ですわ。  ああ、お兄様には視えていないからそんな誤解をしてしまったのですわね……。 「全く身に覚えがありませんわ。……ですが、あなたがわたくしとの婚約を破棄すると仰るのであれば、わたくしはそれに従うまでですわ」  クロードお兄様は、この国の第二王子。  隣国皇帝の護衛兼従者を務める賢者様の娘であるイレーネお義姉様と結婚して隣国貴族家に婿入りすることで後継者争いを避けるという目的もありますのに。
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