前世の記憶くらい愛と気合いで持ち越してくださいませ

ダンジョン『獅子の塔』攻略開始

　背後から近づいてきていた歩く草に気づいたエディは、それを掴むとエリアボスが出現するフロアに投げ入れましたの。

「……何をしているのです？」

「罠があるならば、これで多少は避けられるのではないかと思いましたが……どうやら、あれでもエリアボスが出現するようですね」

　罠の有無を確かめるために石を投げてみる手があることは知っておりましたが、魔物を投げるなんて……。

　歩く草は、仲間を呼んだらしく、フロアの上のほうから歩く草が大量に落ちてきておりますの。

　その歩く草が大量に積み上がり、全体が光に包まれたと思いましたら、巨大な歩く草になっておりましたわ。

「鑑定結果は……『歩く草（融合体）』？」

　イレーネお義姉さまもエディ同様に冷静に対応しておりますの。

「……まあ、融合体が『叫ぶ草』にならなかっただけよかったと思うべきだろう」

　クロードお兄さまが告げた『叫ぶ草』は、上層階に出現する防音結界や耳栓が必須となる魔物のことですの。

　見た目は『叫ぶ草』も『歩く草』によく似ておりますから、落ちてきたのが叫ぶ草でなくてよかったですわ。

「まだ何か落ちてきますね。……スライム？……キングダンジョンスライムのようですが……群れですね」

「歩く草（融合体）が、キングダンジョンスライムの群れを葉に乗せておりますの……」

　まるで、デコレーションツリーのようになっておりますの。